ディア デム

『ディア デム』さく・え 遠藤さや

あるところに、みんなが王冠をかぶる国がありました。この国で生まれたこどもはみんな王様と同じなのだと伝えるために 、王様ペンギンがはじめたことでした。みんなは…

でも、実はデムは王冠を無くしていました。走る時に、王冠はすぐ風に飛んで行ってしまって、二度と見つからなかったのです。みんながデムに言います。「王冠はどうしたの…

お母さんにも、お父さんにも、話せませんでした。お父さんは言います。「デム、お父さんの王冠をごらん。大人の王冠だ。お前も、もうすぐ大人の仲間入りをしてりっぱな王…

デムはボロボロと泣きました。みんなは嬉しそうに王冠を木の葉やワラで磨いているなかで、デムだけが、泣いていました。デムにはその王冠はないのです。デムは考えました…

そして、儀式の日、みんながお城に集まりました。「みんな、集まったかな？」王様ペンギンが声をかけて周りを見渡します。「みんなおめでとう！」口ぐちに大人たちが言い…

「言ったら、この国にいられなくなると思いました。僕はこの国が大好きで、国のことなら何でも知っています。だからずっとここに居たくて」デムの目から涙がボロボロと流…

デムは、泣きながらわめくように言いました。「本当に、この国に居たいんです！」「では聞くが、君は何でこの国が好きなんだね？お花や風や虫は、国の外にもたくさんある…

「…わかり、ました」ようやく絞り出した声でデムは王様に一言、「今からこの国を出ます。今までありがとうございました。」とだけ言って、きびすを返しました。「待つと…

…………『……王様、ありがとうございます。』おしまい、そして、つづく。_________________ここまでよんでくださったみなさま、ありがとうございます…